『武装錬金』の場合

作品解説・レビュー

集英社刊・コミック雑誌『週刊少年ジャンプ』上で、『るろうに剣心』で有名な和月信宏氏によって
打ち切りの危機に常に晒されながらも、コアなファンに大好評な現在連載中のバトルアクションタイプの漫画。
錬金術による人喰い人造人間『ホムンクルス』と『錬金の戦士』達の戦いに
望まざるも介入する一般人の少年、武藤カズキの戦いを描く。
賛否両論を呼んだ『るろうに剣心』、恐ろしく素早い終了となった『ガンブレイズ・ウェスト』で
未消化だった部分に作者が挑む意欲作、これまた賛否両論ながら、少年誌の未来を憂う作者の
入魂が垣間見られ、現在のジャンプの中で抜群の存在感を誇る人気作品である。
現在は連載が終了し、後日談『武装錬金アフター』を掲載した完結第10巻も発売されている。


キャラクター紹介

武藤カズキ

私立銀成学園の2年生で、元々は青汁が大好きなだけの一般人。
『ホムンクルス』巳田と斗貴子の戦闘に巻き込まれ、一度命を失ってしまう。
だが、斗貴子の核金(かくがね)治療により、武装錬金の力を得ると同時に蘇り、
なし崩し的にパピヨンマスク一党との戦いに、参加する事になる。
元々は素人ながらも、とことん前向きな性格とはしっこさで幾多の戦いを乗り切り、
遂に一度はパピヨンマスクを葬ることに成功する。だが、それをきっかけに
更なる強敵との戦いに参加する事になる。『錬金戦団』の一員として。
なお、極度の天然ボケでお姉さん好き。武装錬金は突撃槍の『サンライト・ハート』。
5巻のラストにして、突如黒き核金により、『ヴィクター化』と呼ばれる現象を起こす。
数家具の戦いの末、遂にヴィクターとの最終決戦を行うため、月へと赴く……
その後、全ての戦いに決着を着け、ヴィクター化現象から元に戻り、そして学生へと戻る……

津村斗貴子(つむら ときこ)

『錬金戦団』の一員で、かなりの凄腕。その実力は戦士長も認める。
セーラー服を着ているのは、前回の任務時に通っていた学校の服をそのまま着用しているため。
戦いの中で、カズキを助けた事をきっかけにカズキと関わり合うようになる。
正体を秘密にするため、かなり豪快な嘘もついている。一度はホムンクルスの幼生に寄生され、
危うく命を落としかかったが、カズキとブラボーの手により、無事に生還。
その後、銀成学園に転入し、カズキと同じクラスに通う……のはいいのだが、
年齢はカズキより上なのに、カズキと同じ学年なのは、何か理由が? 只今作品中人気第1位。
ちなみに両親をホムンクルスに殺されているらしい。武装錬金は処刑鎌の『バルキリー・スカート』。
幼い頃の悲劇から、キャプテンブラボー、火渡、千歳の部隊により救出された過去がある事が発覚。
様々な過去を振りきり、ついにカズキとの愛を受け入れるに至る。
なお『アフター』にて傷のエピソードが明らかになっているのにも注目したい。

キャプテン・ブラボー

『錬金戦団』の戦士長にして、恐らくは斗貴子の直属の上司と思われる。
2巻ラスト近くにおいて、あまりに唐突なる登場を果たし、カズキが手に入れたワクチンで
斗貴子の命を救った後、勝手に銀成学園寄宿舎の新管理人に納まってしまう。
素顔も正体も本名も何も知らないと斗貴子が言っているそばから素顔で現れたが、
確かにそれ以外は多くの謎に包まれていると思われる。戦士としても超一流で
武装錬金は防護服の『シルバー・スキン』のみで、あとは自分の拳で戦う豪快な人。
それに相反して繊細さも持ち合わせており、殺された同胞に対して大いなる悲しみを抱く。
カズキの再殺任務を苦渋の決断で引き受ける事になる。その後、カズキと直接対決の際、重症を負う。
口癖は『ブラボー』で何かにつけていつも言っている。本名 防人 衛。

戦士長・火渡赤馬(ひわたり せきま)

『錬金戦団』の戦士長にして、元・ブラボーの同僚でもある人物。
性格は相当に過激で、正しい事がまかり通らないことを強調するような
言動と行動を取っていたりする。自分の部隊に剛太を組み込もうとするが、
拒否されたため、カズキ再殺部隊のターゲットに加えるなど、
その行動はかなりあからさまで、戦いを楽しむ節も見られる。
武装錬金は焼夷弾の武装錬金『ブレイズ オブ グローリー』。
不条理を受け入れる性格の土壌は、斗貴子を救出した時の作戦がトラウマになったもの。

戦士・千歳

『錬金戦団』の戦士にして、元・ブラボーの同僚でもある人物。
こちらは火渡とは違い、静かなイメージを持っており、
現在は偵察任務などで活躍しているようだが、錬金の戦士である以上、
何らかの武装錬金を所持しているものと思われる。
ブラボーの態度の変化も敏感に受け取りつつ、それをクールに流す一面も。
ニュートンアップル女学院の戦闘にて、アレキサンドリアに囚われるも、
カズキ達の活躍によって、無事に生還し、以後は様子見。
武装錬金はレーダーの武装錬金『ヘルメスドライブ』。

大戦士長・坂口 照星

『錬金戦団』の大戦士長にして、キャプテンブラボー達の上司。
かつては同じチームでブラボー、火渡、千歳を率いていた模様で『照星部隊』と呼ばれていた。
物腰は柔らかく、口調も非常に丁寧なように見えるが、
『互いに大人になった』などといいつつ火渡に相当過激な暴行を加えている。
ヴィクターとの戦いでは敗戦になったものの、相当に善戦をしたと言える。
武装錬金は全身甲冑の『バスターバロン』。見た目はまんま巨大ロボット。
最終的には宇宙へ飛び出すという離れ業もやってのけた。
戦いの後は錬金船団の段階的活動凍結に乗り出す事となった。

中村 剛太

『錬金戦団』のルーキーにして、斗貴子の(数少ない?)後輩。
6巻中盤にて初登場し、斗貴子への慕情を募らせているあまり、
敵であるカズキも助けてしまう、どこか可哀想な男。
斗貴子がカズキに同行するために、錬金戦団から標的にされているのを知り、
戦士長・火渡に反逆し、カズキと敢えて共闘する道を選ぶ。
長い共闘の中で、ついにカズキを恋敵でありながら、戦友と認める。
武装錬金は戦輪(チャクラム)の『モーターギア』。

戦いの後、カズキ達と共に学園生活を送る事になる。

武藤まひろ

カズキの妹で、斗貴子とは相反する要素を持つ、プライベートタイプのヒロイン。
カズキ同様極度の天然ボケだが、かなり人懐っこく、大概の人から好かれる。
(その天然ボケで多少なりとも周りに迷惑を与えているにも関わらず)
銀成学園の制服に憧れて入学という、いささか不純な動機であるにもかかわらず、
結果的には兄を精神的に支える、物語の要のキャラクターである。
このキャラクターは逸話が多く、最初は年上キャラとして設定されていたらしい。
なお、ちーちん、さーちゃんという友人二人がいる。5巻にて遂に兄の正体を知る事に。

岡倉英之

カズキも含む銀成学園2年の四馬鹿のうちの一角。
お馬鹿な感じもあるが、ロングなリーゼントのせいもあってか、
時にシリアスなキャラ。基本的には(どなる)ツッコミ担当。
『エッチな岡倉君』などと最初の方は呼ばれていたが、
『エロスは程々にしときなさい』の斗貴子の言動により、エロスに格上げ。(笑)
その後は『どーせ俺はエロスだ、ちくしょう!』な人に。
物語はガンガン進んでいくが、彼のポジションは変わる気配無し。

大浜真史

四馬鹿のうちの一角。身体は大きいが気は弱い。
(ふりまわされ型)ツッコミ担当である。
三人の中では一番目立たないが、よく驚くのが役割に。
気は優しくて力持ちっぽいところが好かれるのだと思われる。
何かにつけ、誰かを心配しているように思われるのは、
やはり見た目が原因なのか?

六枡孝二

四馬鹿のリーダー格。冷静なタイプの人。
(冷めた)ツッコミ担当。普段は前に出ないが、
いざという時はその能力を生かして……なキャラのはずだが、
読唇術、声色変化など、何故か謎多き奇人となっていく。(笑)
だが、三人の中では一番気が利き、判断力も確か。
ちなみにカズキなど、身の回りの人物の声真似からプロのアナウンサーの声までOK。

早坂桜花・秋水姉弟

『L・X・E』の『信奉者』たる人間の双子。
幼い頃に早坂真由美という人物によって誘拐され、育てられる。
早坂真由美の病死直前から閉じ込められ、餓死寸前に至るも、辛くも救出される。
世間に恨みを抱き、そのままバタフライと共にL・X・Eへ所属する事に。
なお、基本的には互いの事しか信用しておらず、結果、カズキ達に敵対。
その後交戦するも、カズキの真摯な態度に打たれて、L・X・Eを自ら脱退。
その際の交戦で姉、桜花は入院、秋水は修行の旅へ。
修行後、秋水はヴィクター撃滅作戦に参加し、バスターバロンの左腕に乗る。
桜花の武装錬金は弓矢の武装錬金『エンゼル御前』。
秋水の武装錬金は日本刀の武装錬金『ソードサムライX』。
なお、『エンゼル御前』は自律型の武装錬金で、桜花と意識を共有している。
『エンゼル御前』の言動や行動から、桜花は密かに腹黒い面を持つ、とはブラボーの談。
戦いの後、二人揃って、しかし互いに依存しない道を歩み始めつつある。

パピヨンマスク

本名・蝶野公爵。銀成学園の3年で2回留年している。(持病と引きこもり癖のため)
ホムンクルスの伝承を自宅で発見した事をきっかけに、ホムンクルスの研究を独学で進める。
その結果、数多くのホムンクルスを生み出した事により、錬金の戦士及びカズキと敵対。
数々の接触を経て、最終的にホムンクルスと化し、父・蝶野刺爵と、弟・次郎他多数を殺害(捕食)。
偽善者は嫌いという思想とコンプレックスの塊のような人物であったが、
カズキに倒される際、ただ一人本名を呼んだカズキには憎悪とも感謝ともつかぬ微妙な感情を抱く。
が、ドクトル=バタフライにより再生した後は、暗躍しながらもライバルと認めたカズキを
倒す機会を伺いながら、再びパピヨンマスクとして活動を始める。L・X・E所属だったが、
斗貴子から核金を自力で奪い取り、バタフライに対し、造反する。
以降は独力で治療を行いながら、暗躍することになる。最近は人喰いの兆候が薄れている……?
アレキサンドリアに託された情報を元に、ヴィクター、カズキの双方を人間に戻すべく
『白い核金』及び『仮死化カプセル』の製造に取り組むようになるが、全てはカズキとの決闘のため。
パピヨンマスクの武装錬金は『黒色火薬』の武装錬金『ニアデスハピネス』。

最終決戦の敗北の後は、カズキ達の街に出没する謎の怪人として大人気を博する事となる。

ドクトル=バタフライ

『人間型ホムンクルス』の集団『超常選民同盟(通称L・X・E)』のナンバー2にして、
蝶野公爵の4代前の先祖。本名は蝶野 爆爵というらしい。
現在錬金の戦士達が最優先で狙うべき目標の一人であり、間違いなく物語のキーマン。
ただ、センスのおかしい趣味は子孫同様であるらしい。当然彼自身もホムンクルスで、
L・X・Eの王となるべき、錬金の戦士からの裏切り者を完治させる実験のために、
パピヨンマスクを復活させる。何故だかよく分からないが、銀成学園を
『彼』の復活祭の場所として、ターゲットに挙げている。謎の多い人物。
実力のほどは定かではないが、研究者としては超一流。パピヨンマスクの反乱に遭い、殺害される。
バタフライの武装錬金は『チャフ』の武装錬金『アリス・イン・ワンダーランド』。

ヴィクター=パワード

『人間型ホムンクルス』の集団『超常選民同盟(通称L・X・E)』のリーダーにして、
人間もホムンクルスも超えた、生態系の真なる頂点に立つ存在。
錬金の戦士を裏切った者とされているが、ヴィクターとの話には食い違いもある。
謎の黒い核金を使い、圧倒的なパワーを発揮する。
性格的には割と冷静だが、譲れないところには頑固だと思われる。
自分がヴィクター化した時、娘ヴィクトリアをホムンクルス化させられて
差し向けられた事により、妄執的な怒りを抱いた事がそもそもの対立の原因。
大戦士長坂口のバスターバロンを打ち砕く際、ヴィクター第三形態へと進化するも、
カズキが決死の思いで打ち込んだ白い核金によって、第二形態まで引き戻され、
宇宙へと連れ出され、カズキと二人して月へ不時着するに至る。
理解し合えた二人は共に地球へ帰り、人間に戻った後、ホムンクルスを束ねる者となる。
ヴィクターの武装錬金は『グレートアックス』の武装錬金『フェイタルアトラクション』。

アレキサンドリア=パワード

ヴィクターの妻にして、ヴィクトリアの母である者。
ヴィクターが戦死寸前に陥った事により、試作型の黒い核金を封入した事により、
今回の事件の張本人となってしまっているが、それにより自分も死亡しかける。
その後長い期間を経て脳髄だけの存在になり、クローンで培養した自分の脳と、
兜の武装錬金『ルリヲヘッド』において思考を拡大し、会話を行うようになった。
数々の人物をルリヲヘッドの媒体にしつつも、無傷で解放し、研究を行う。
そんな生活を続ける事100年以上、ついにヴィクター現象を相殺するという、
『白い核金』を形成するに至る。が、これで救えるのはカズキかヴィクターの一人だけ。
カズキの結論に快く協力し、パピヨンにほんのわずかな希望を残し、寿命を迎える。
娘であるヴィクトリアに唯一の遺言を残して……

ヴィクトリア=パワード

ヴィクター、アレキサンドリアの娘である人間型ホムンクルス。
カズキや千歳達のニュートンアップル女学院潜入作戦の際に登場し、
一般人の振りをしてカズキ達を翻弄するも、パピヨンにあっさり見抜かれる。
一応の協力をカズキ達にするが、おおむね意見は敵対的であったと言える。
どちらかというとヴィクター寄りの人物であるが、それというのも
ヴィクターが暴走した際、ホムンクルス化させられて父親を攻撃させられたため。
最終的に、死にゆく母に自分は大丈夫だ、とだけ語る。
なお、人間を直接捕食しておらず、母親のクローンの出来損ないが主食だったらしい。
武装錬金は避難壕(シェルター)の『アンダーグラウンドサーチライト』。


作者の重点

本編と同じように作者が力を入れている部分に『キャラクターファイル』『ライナーノート』がある。
これはいわゆるネタばらしという奴で、前2作同様和月氏の得意な技法でもある。
『キャラクターファイル』はいわゆる『登場人物制作秘話』で小ネタも重要情報も満載。
本来はファンブック等に記さなければならない事を書いたお得な情報とでも言うべきか。
『ライナーノート』は描き終えた後の各話ごとの作者自身の感想。作品と併せて読もう。
こういったサービス精神旺盛なところも、和月氏の魅力と言えよう。


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