エピローグ


こうして、彼等はようやく平和を掴み取ったのだった――
「……っと」
一人の高校生が立ち上がった。
名を、三井真人(みつい まひと)という。一風変わった名前だが、気にはならない。
彼は、ネットゲーム『勇者の館』を静かに終了した。
ゲームマシンから、インターネットに接続し、数人でプレイするスタイルのゲームである。
その中でザインがプレイしたザインと知り合ったのが、ラルフ王役の両国京太郎、
ライナ役の桜野葉子、ステルサー役の仙道進、セレナ役の樋山愛香、ミルフィーユ役の綾辻奈穂であった。
他の連中は、これらの知り合いであった人物で、このゲームに参加してくれた連中である。
しかし、ただのネット友達だったこれらのメンバーとは、どういう偶然か、
会える距離だったのだ。桜野とは、ただのネット友達ではなくなっている。
俗に言う『彼氏・彼女』の関係というやつだ。
今日は、クリアを予想して、クリア記念のオフ会を企画している。言うまでもないが、
オフ会とは、ネット友達同士が、実際に会う企画の事である。
そういう事情もあって、普段不摂生でいい加減な生活をしている真人は、久しぶりに、お洒落してみた。
(それにしても……)
真人は思った。
(何なんだろうね、この『勇者の館』ってのは。やたら自由度が高いかと思えば、
パーティを組んだ途端、色々とストーリーが勝手に進んでいきやがる。
確か、作り主が次々とデータを更新してるんだったかな? よくもまあこんだけのマネができるもんだ。
しばらくすれば、また新しいストーリーが出てきてやがるし。感心すんぜ、まったく)
「三井くーん!」
葉子の声にすかさず反応する真人。
「おう! 今行くぞ!」
他の連中が来る前に少しでも家の中で二人きりで語らおうかと、急いで2階の部屋から玄関へ向かう。が――
どからどからどからどからどかっ!
お約束通り、真人は階段から落ちる。
「……お約束、ありがと」
「どういたしまして」
葉子の苦笑に対して、真人も苦笑するしかなかった。
「とにかく、入ってくれ」
「おじゃましまーす」
『おじゃましまーす』
葉子の声の後ろから、複数の人間の声。
京太郎、進、愛香、奈穂である。少し二人きりも何も、一緒に来ていた。
「頼む……もう少し気ぃ効かしてくれ……」
起き上がりつつ、ボヤく真人。
「やかましい。俺だって愛香さんと二人きりの方がいいんだよ」
これは進である。彼も愛香と交際している。
「ボヤかないの。楽しいオフ会でしょうに」
奈穂が仕切る。
「さ、行くわよ」
「お、おう」
彼等は、全員でテーブル一つを貸し切っている居酒屋に、歩いていった。
そして、ネットでの再会を道すがら、誓ったのだった――

―完―


小説の入口へ戻る
トップページに戻る
inserted by FC2 system