「んぁ……?」
起きたら朝になっていた。

「おお、起きたか。」
すぐ横の椅子にヴァイパーが座っていた。
「眠くない?」
「俺をその辺のトカゲと一緒にしてもらっちゃ困るな。」

ヴァイパーはマリアベルに説明されたことを話した。
「……やっぱり精神力は使ってるんだろ?」
「よく分からない……」
「分からないのか? 自分の製造者からそういった話されなかったのか?」
「お父さん(=製造者)はすぐに死んじゃったから……」
ヴァイパーは頭を抱えた。
「うーん……そんなものかな……」


昼過ぎ、ようやくデーティは立ち上がれるようになった。
「大丈夫か?」
「フラフラするけど……それより、この村の調査をしないといけないんでしょ?」
「ん? ああ……」
「手伝うよ。メモ係ぐらいは出来るから。」
「スマンな。」
デーティは少しよろけ気味に歩き出した。ヴァイパーは支えるように歩いた。


「この村に何があるかって? 別に何も無いけどねぇ。」
「ここにあるのはあの教会だけだ。」
「勇者軍メンバーも出てない、名物っちゅーもんも無い。」

「さっぱりだな……」
午後に入って2人で聞き込みをするも、別に大した情報は無い。
オロチは何故ここを調査するよう命じたのだろう……さっぱり分からない。
「うーん……もっと素朴な見落としがある気がするんだけど……」


「わぁ、ヤモリのおっちゃんだ!!」
……突然子供が話してきた。2、3人のグループだ。
「ヤモリじゃない。俺はトカゲだ。」
そう言われたヴァイパーの口調は怒っていたが、顔は笑っていた。

……デーティはふと聞いた。
「ねぇ……この村に何か無い?」
ひょっとしたら、この子達が……

「ああ……あるよ!! 大人は知らないけどね。」
「えっ……!?」
予感的中……!!

「付いてきて!!」
2人は子供達の後に付いて行った。


子供達は雪も積もらぬ長い草の生い茂る道をひたすら歩いていた。

「一体何があるんだろう……」
「まさか実のよく出来る柿の木でもあるとか言うんじゃないだろうな。」
2人とも殆ど期待はしていなかった。
だが手がかりが無い以上、最悪子供達の遊び相手になってやる覚悟はしていた。

しかし、2人は予想以上の発見をする……


「ほら、ここだよ!!」
そう子供達に案内されたのは……
「池……?」
「ここの水、他のどこよりも綺麗なんだ。」
「あ、ああ……そうなんだ……すごいね。」
デーティは少し呆れた感じで言った。期待外れだったか……

……と。
「これは……」
ヴァイパーは池の水を手に掬ってみた。
「どうしたの?」
「……デーティ、こいつは純度の高い聖水だぞ!!」
「えっ……!?」
「思えばこんな小さな村にあれだけ大きな教会があるのも、こいつのせいだと考えれば辻褄が合わないか?」
「そういえば……」

聖水は精神力回復に効くとされる。名前だけ聞けば怪しげなものを重宝するのもそのためだ。
また、小さな村で聖水は缶詰め又は瓶詰めにされて教会等の精神力流出の少ない場所で保管される。

「不思議な水なんだよ。これを飲めばすぐに元気になるしなぁ。」
「そうだろうな……」
それにしても思わぬ収穫だ……これだけでこの村に来た甲斐があったというようなものだ。


「あー、汚れた……」
村に戻ってきて2人は教会でまず落ちついた。
「あの子達、よくこのことを知ってたよね。」
「……」

ヴァイパーはふとした違和感に気付いた。
「……?」

「どうしたの?」
デーティがその様子を見て聞いてきた。
「ちょっと待てよ……おかしいぞ……」
「えっ?」
「子供達が知っているってのは良いにしても、大人が誰も知らないってことが有り得るのか?」
「あ……」
「増してこの時代だ……あれだけの『金の生る木』を誰一人として利用しないなんてこと、考えられるか?」
「そういえば……教会がこんなに繁栄しているのに、どうしてだろ?」

……ヴァイパーは1つの決断に至った。
「考えられるのは1つ……誰もこのことを話してはいけない、或いは話そうとしないんだ……
 大人は事情を知っているから俺達を誤魔化した。だが子供は何も知らず喋った……」

ふと壁のレリーフに目をやった。
「何かあるぜ……この教会……」


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