「ぐ……がっ!!」

デーティは血を吐いた。
光属性の魔法というものは恐ろしい……使いようによって灼くことも切り裂くことも出来る。
「急所を外しましたか……それにしても脆いものですね……」
「ぐっ……」
口から滴り落ちる血……雪の積もった地面に紅い斑点が出来る。
「(辛い……倒れそうだ……)」

だが退くことも出来ない。後ろでは村人が武器を持っている。
騙されている人間を無闇に傷つけることも出来ない……八方塞がりだ。

「ふふふ……では、そろそろ旅立つ準備は宜しいですね……」
「……」
デーティは死を待つことしか出来なかった。


「そこまでだ!!」
その時、どこからか男の声がした。

「誰ですか……!?」
「……?」
声の方を見ると、そこには碧髪の青年がいた。
「様子がおかしいからこの村を見張っていたら、まさかこんなところにいるとはな、シンシア=スターリィフィールド!!」
「……サイモン=アニーズィさんですね。」
「この村の人々を騙した罪は重いぞ……」

……男はデーティに寄って来た。
「この子は僕が保護する……貴様の好きにはさせない!!」
「……」
デーティはあまりに突然の出来事にわけが分からなくなっていた。
「まあ、良いでしょう……いずれまた貴方とは、必ず逢うことになるでしょうからね……」
シンシアは手を下ろした。

「……もう大丈夫だ。」
男にそう手を引かれると、デーティはそれに付いて行った。
そして男は村人に叫んだ。
「道を開けてくれ。この子は妖精の森に閉じ込める。それなら良いだろう!?
 それさえ拒否するつもりなら、勇者軍にも考えがある……!」
「妖精の……森……?」
デーティはさらに混乱した。すると男が小声で囁いた。
「大丈夫……いずれ君も自由になれるから……」


男に連れられ、デーティは観衆の前をゆっくり歩いて行った。

「……そうだ、スターリィフィールド。」
デーティが何かを思い出したように言った。
「何です……?」

デーティは血の付いた指を見せた。
「血もまた身体の一部であることを忘れちゃ困るな……」

「……!!」
突然シンシアの足もとの血の痕が実体化した。
「ぐっ、ライト・キャノン!!」
……分身はすぐに灼かれたが、シンシアはかなり動揺したようだ。

「僕はこの血に賭けて貴様を殺す……
 貴様も勇者軍の末裔なら血の重みを知っている筈だ……」
「ふふ……面白いですね……」
デーティは今一度シンシアを睨みつけた。

「(スターリィフィールド……一生忘れないからな……)」


小説の入口へ戻る
トップページに戻る
inserted by FC2 system