第4話 吸血鬼の城


町人達に許してもらったケイン達は、装備調達のために、
大きいクエストをこなす事にした。その報酬を資金にするのだ。
というわけで、吸血鬼退治である。
吸血鬼……またはヴァンパイアの事は説明は要らないだろう。
陽光とニンニクが弱点なのである。あとは銀武器とか、杭とか、聖水とか十字架とか……
上級モンスターのくせに弱点の多い奴である。

「あのなあ……アルヴァ、何だってこんなクエスト受けるんだよ。勝てっこねーだろ?」
「何言ってるんだ。ヴァンパイアの一人や二人倒せないで、何が魔王討伐なんだか」
「そりゃあまあそうだが、ものには順序ってもんがあるんだぞ」
「はい」
いきなり挙手するルーノ。この女僧侶、影は薄いが、頭は回る。
「何かな? ルーノ女史」
「ええと、誰一人傷付かないで、しかも低コストにヴァンパイア討伐する方法がありますぅ」
「そんな虫のいい話があんのか? ルーノ」
「はいぃ。何だったら今すぐにでも」
「今すぐって……まだ昼だぞ」
「だからですってぇ。行きましょおぉ」
ケインやアルヴァには、ルーノの言っている意味がよく分からない。

そして、彼等はやってきた。ヴァンパイアの城に。しかし、
昼間とあってか、モンスターの類は一匹もいない。
ケイン達は最上階に辿り着いた。そこには、大きな棺桶がある。
彼女はそれを指し示して言う。
「ケインさん、アルヴァさん、それぞれ端っこ持ってくださいぃ。
 私とシフォンさんが横を持ちますからぁ」
「お、おい。ルーノ? これって、ヴァンパイアの眠る棺じゃねぇのか?」
「まさか、これを町に持って帰るなんて言わないでしょうね?」
「そーですぅ。早くしないと、夜になって目覚めちゃいますよぉ」
アルヴァとシフォンの問いにあっさり答えるルーノ。
「ま、まあいい。何か考えがあるんだろう」
ケインの承諾により、その棺はその日の午後2時までに持ち帰られることとなった。

「ファルコンさ〜ん、依頼人さ〜ん」
「おお、ルーノか。どうしたい?」
「勇者一行の皆さんも」
ルーノの声に反応したのは、クエストを紹介するクエスト屋のファルコン。
それに、偶然居合わせたこの件の依頼人。
「ええと、頼まれたヴァンパイア退治、完了しそうですぅ」
「しそう?」
ケイン達も、ファルコン達も怪訝な顔をする。
「よし、日光は出てますねぇ。ケインさん、蓋開けて下さいぃ」
「お、おう」
言われるがままに、蓋を開けるケイン。何がなんだか分からないが、とにかく従う。
ぱか。
「我が眠りを妨げ……」

ぼしゅっ!

怒声をあげる間もあらばこそ、あっさりその場で消滅するヴァンパイア。

「……は?」
一同、よく事態が飲み込めていない。
「ヴァンパイア退治、完了しましたぁ」
「あ、そか。棺の中で眠ってるんなら、昼のうちに外に出して、光に当てればいいんだ」
その事にケインはようやく気付いた。
どうやら、ルーノは依頼人本人に証人になってもらうために、ここまで棺を運ばせたようだ。
しかし、彼等にかけられたのは、ねぎらいの言葉ではなく、無常な一言だった。
「……身も蓋もないな……依頼料減棒10%ね」
「ええええっ? そんなぁぁぁぁぁっ!」
何人もの兵士を倒したヴァンパイアをインチキで倒したのだから、当たり前である。
むろん、この後ルーノがアルヴァにはり倒されたのは言うまでもない。

第4話 終わり


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