「あのなあ……アルヴァ、何だってこんなクエスト受けるんだよ。勝てっこねーだろ?」
「何言ってるんだ。ヴァンパイアの一人や二人倒せないで、何が魔王討伐なんだか」
「そりゃあまあそうだが、ものには順序ってもんがあるんだぞ」
「はい」
いきなり挙手するルーノ。この女僧侶、影は薄いが、頭は回る。
「何かな? ルーノ女史」
「ええと、誰一人傷付かないで、しかも低コストにヴァンパイア討伐する方法がありますぅ」
「そんな虫のいい話があんのか? ルーノ」
「はいぃ。何だったら今すぐにでも」
「今すぐって……まだ昼だぞ」
「だからですってぇ。行きましょおぉ」
ケインやアルヴァには、ルーノの言っている意味がよく分からない。
そして、彼等はやってきた。ヴァンパイアの城に。しかし、
昼間とあってか、モンスターの類は一匹もいない。
ケイン達は最上階に辿り着いた。そこには、大きな棺桶がある。
彼女はそれを指し示して言う。
「ケインさん、アルヴァさん、それぞれ端っこ持ってくださいぃ。
私とシフォンさんが横を持ちますからぁ」
「お、おい。ルーノ? これって、ヴァンパイアの眠る棺じゃねぇのか?」
「まさか、これを町に持って帰るなんて言わないでしょうね?」
「そーですぅ。早くしないと、夜になって目覚めちゃいますよぉ」
アルヴァとシフォンの問いにあっさり答えるルーノ。
「ま、まあいい。何か考えがあるんだろう」
ケインの承諾により、その棺はその日の午後2時までに持ち帰られることとなった。
「ファルコンさ〜ん、依頼人さ〜ん」
「おお、ルーノか。どうしたい?」
「勇者一行の皆さんも」
ルーノの声に反応したのは、クエストを紹介するクエスト屋のファルコン。
それに、偶然居合わせたこの件の依頼人。
「ええと、頼まれたヴァンパイア退治、完了しそうですぅ」
「しそう?」
ケイン達も、ファルコン達も怪訝な顔をする。
「よし、日光は出てますねぇ。ケインさん、蓋開けて下さいぃ」
「お、おう」
言われるがままに、蓋を開けるケイン。何がなんだか分からないが、とにかく従う。
ぱか。
「我が眠りを妨げ……」
ぼしゅっ!
怒声をあげる間もあらばこそ、あっさりその場で消滅するヴァンパイア。
「……は?」
一同、よく事態が飲み込めていない。
「ヴァンパイア退治、完了しましたぁ」
「あ、そか。棺の中で眠ってるんなら、昼のうちに外に出して、光に当てればいいんだ」
その事にケインはようやく気付いた。
どうやら、ルーノは依頼人本人に証人になってもらうために、ここまで棺を運ばせたようだ。
しかし、彼等にかけられたのは、ねぎらいの言葉ではなく、無常な一言だった。
「……身も蓋もないな……依頼料減棒10%ね」
「ええええっ? そんなぁぁぁぁぁっ!」
何人もの兵士を倒したヴァンパイアをインチキで倒したのだから、当たり前である。
むろん、この後ルーノがアルヴァにはり倒されたのは言うまでもない。
第4話 終わり